他方、取締役の退職慰労金は在任中の業務に対する報酬で、会社がこれを支給するためには、会社法の定めにより、株主総会の決議が必要となります。ただ、今の共同経営者は残念ながら、そもそも支払う意欲がなさそうです。しかし、経営者保険は被保険者の同意がないと、契約できません。ご主人が何を目的に被保険者になることに同意したかが重要です。
退職慰労金規定がある会社の経営者保険の事例で、保険金の範囲内で規定に従った退職慰労金を遺族に支給することを予定し、取締役も、その認識で被保険者となることに同意した場合は、退職慰労金相当額を遺族に支払う旨の合意が成立したと認め、遺族に対する支払いを命じた裁判例があります。
会社に協力者がいれば、ご主人が経営者保険の被保険者になることを同意した事情を確認して、加入保険のパンフレットなども準備し、弁護士に相談してください。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年2月8日号