「本麒麟」の登場はビール市場を変えた
──これからのキリンビール、ひいては業界全体の在り方についても伺いたい。
布施:ビール市場のピークだった1994年当時と昨年のビールの総課税出荷量の差を見ると、当社やアサヒビールさんのどちらか1社以上のボリュームが消失してしまった計算です。そういう縮んでいく業界では、シェアに一喜一憂する時代ではなくなっている。
一方で、缶チューハイやハイボールによるウイスキーの復権など、アルコール消費の多様化が一気に進みました。流通面も、酒屋さん中心の宅配や自動販売機のチャネルが大きく減少し、コンビニ、ドラッグストア、eコマースが台頭している。そんな状況の中で、いかにお客様から見て魅力的であり続けられるかを考えていきたい。
そして「人を残す」ことが何より重要です。利益やブランドを残すのも大事ですが、一番得がたいのは次世代を担う人材です。
その思いから、去年、20~30代の若手を集めて「布施塾」という社内経営塾を始めました。他業種の経営者を招いて経営観を語って頂くと、参加者はもの凄く刺激を受けていた。
また、最近の新入社員たちと話をしていると、多感な時期に東日本大震災を経験したからか、我々が思う以上に「社会の役に立ちたい」という思いが強いと感じます。