話を理解する前に、場面も時代も人物も展開してしまうから、見ているこちらは消化不良気味になってしまう。1人の登場人物を中心に展開が早いだけなく多軸で展開されるし、画面いっぱいに物や人物、セットが溢れ、自分の認知や理解の範囲を超えて、処理能力が追いつかない。
この消化不良、これまでの大河ドラマなら解消できたものだ。分かりやすく、馴染みの深い歴史上の人物が描かれていたからだ。多少、話が逸れたり演出が加えられても、ある程度の歴史を知っていれば、その人物がどこでどうなるのか、ストーリーがどう進むのか、人間関係がどうなっていくのかが予測できた。だが、今回は近代史。登場するのはよく知らない人物ばかり。話がどうなっていくのかも予測不可能。調べたところで、細かな史実も人間関係もよく分からない。
予測するから期待する。期待するからワクワクする。期待をうまく裏切られるからはまっていく。大筋が分かっているから、演出が楽しめる。安心して心地よく見ていられる。これまでの大河ドラマはこんなパターンだったと思う。期待したのに、興味があるのに分からない、付いていけない、予測できないとなると、見ているうちにストレスが溜まっていく。
このストレスとどう向き合うかだが、ストレスに対処する「ストレスコーピング」の考え方で捉えると分かりやすい。ストレス要因であるストレッサ―は番組で、コーピングはストレッサ―を取り除くことだ。つまり、番組を見ない。こういう人が多くなると、結果的に視聴率は下がってくる。
加えて、人の認知機能には限界がある。視覚的には同時に注意を向け続けられるのはだいたい4~5個。短期に記憶しておける情報は約7個と言われているが、提示時間や明るさ、新奇性などによって、その度合いは変わってくる。さらに、年代が上になるほど認知機能は低下する。私などは話しに付いていこうと思っても、見ているうちに脳がフリーズ。残念ながら目が追いつかない感じなのだ。もう少し分かりやすくしてもらえたらと、つい思ってしまう。
コーピングには見方や視点を変えたり、違う意味をそこから見出したりすることで、ストレスを無くすという方法もある。東京オリンピック開催に向けたせっかくの大河ドラマだ。パズルの謎解きのような感覚で見れば、また違った面白さが味わえるのでは?と思うのだが、いかがなものだろう。