「スマホでありとあらゆることを瞬時に調べられる現代において、知識の蓄積はAIやコンピューターに任せておけばいい。知識をたくさん持っていることよりも、“それをどう使うか”に価値が置かれるようになったのです。その結果、中学入試においても実験結果や表から情報を読み取って、考察を加えたり、他人にわかりやすく自分の意見を伝えたりする能力を問う問題が多く出題されるようになりました」(水野さん)
開成中と並んで“男子御三家”と評され、難関校の筆頭格とされる麻布中学の「社会」のテストの中には、表を読み込んで「スポーツのルールがなぜ必要か」を問う問題が出題された。
また、千葉県を代表する人気中高一貫私立の共学校である市川中学の「国語」においては、ラグビーやサッカーに関する文章を読んだうえで、「オフサイド」の反則にあたるものはどれかを、記号で答えさせている。水野さんが解説する。
「市川中学の問題は、実際にそのスポーツのルールを知らなくても問題文をきちんと読めば解くことができます。知識はなくても、問題文からヒントを拾い、論理的に考えれば正解が見つかる。こうした問題を出題する学校が非常に増えました」
また、社会に対する幅広い関心があるかも試される。女子の難関校である雙葉中学では「待機児童」に関する問題が出題された。しかしそんなニュースも刻一刻と情報が更新され、古い知識があっという間に役に立たなくなる時代。受験で問われる「活用力」とは「これまでに経験がなかったこと」が起きたとき、恐れずに向き合い、対処する力でもある。
「それを象徴するのが、女子のトップ校である桜蔭中学で出題された算数の問題でした。アナログ時計を使った問題なのですが、数字が17まであるうえ、位置もずれている“これまで見たことのない時計”なのです。確かに難問ですが、落ち着いて問題文を読み、時計の針がどう動くか、そのルールを把握できれば解くことができる。初めての状況に、どれだけ平常心で対峙できたかが、合格のカギになるというわけです」(水野さん)
ちなみにこの時計の問題、算数にもかかわらず問題文だけで500文字を超える。前出の麻布中学の「社会」も、B5用紙5ページが問題文だけでびっしりと埋まっている。
「近年の傾向として、すべての教科に共通して、問題文が長文化しています。今求められる学力の根幹にある力が、読解力であることを表しているといえるでしょう」(水野さん)
「受験=詰め込み、暗記」というイメージは今や昔なのだ。
※女性セブン2019年2月28日号