1965年、読書をする陛下の横で編み物をする美智子さま(共同通信社)
「皇室に嫁いでからの美智子さまは、決して順風満帆ではなく、苦悩の連続でした。悲しみを抱えながらも、嘆くことをやめたでんでんむしの姿にご自身を重ね合わせたこともあったのではないでしょうか」
2010年、両陛下は愛知県にある新美南吉記念館に足を運んだ。記念館の学芸員・遠山光嗣さんが振り返る。
「皇后さまは展示ケースに手をつき、身を乗り出すようにして熱心にご覧になっていました。展示室のご見学前に『でんでんむしのかなしみ』の石碑の前をお通りになったときには、陛下が皇后さまに“文学碑があるよ”とお声をかけられたそうです。
皇后さまが南吉のことを大切に思っていると、陛下もご存じだったからこそのお言葉だったのだと思います。お互いを深く理解されていることが伝わってきました。
そのあと、両陛下は図書室で地元の保育園児たちへの読み聞かせの様子をご覧になりました。お帰りの際に、皇后さまが何度も何度も振り返って、園児たちに手を振ってくださったお姿が強く印象に残っています」
※週刊ポスト2019年3月22日号