週刊ポストが読者700人超を対象に行なった「好きなクルマ・バイク漫画」アンケートで第3位となったが『バリバリ伝説』。元MotoGPレーシングライダーの中野真矢氏はこの作品に並々ならぬ愛情を持つ一人だ。中野氏が語る。
* * *
「グンヘルって何だろう?」
これが僕と『バリバリ伝説』との出会いでした。5歳からレースに出ていた僕がポケバイからミニバイクにクラスを変える時の小学5年生くらいの頃です。
スーツやヘルメットを新調しようと父とバイク屋さんに行ったんです。そこで常連さんたちが話していた「グンヘル」という単語が耳に入ってきました。父親に聞いたら、『バリバリ伝説』の主人公が被っているヘルメットだと。すぐに単行本を10冊ぐらい買ってもらい、読みふけりました。その頃から巨摩郡は僕にとって唯一のヒーローなんです。
1999年にヤマハとプロ契約を結び、ロードレース世界選手権(WGP)に参戦しました。その時の僕はどうしても、郡と同じゼッケンナンバー“56”を付けたくてヤマハに要望しました。「どうして56なのか」と問われた僕は正直に「子供の頃から『バリバリ伝説』に憧れてここまできたんです」と答え、了承してもらえました。ただ郡はホンダに乗っていたので、ヤマハには少し悪いなと思いましたが(笑い)。それから、僕は11年間“56”を背に戦いました。
引退した後、作者のしげの秀一さんからいただいた手紙にあった、「君の中で“56”は終わったわけじゃない、スタートだ。これからも期待しているよ」という言葉は忘れられません。
【PROFILE】なかの・しんや/1977年生まれ、千葉県出身。元MotoGPライダー。2002年からMotoGPに参戦。2009年、現役引退。2012年にモーターサイクル系ブランド「56design」を立ち上げる。
※週刊ポスト2019年3月29日号