衝撃的なデータが公表された。全国の30~49歳の男女1000人に「現時点でどのくらい貯蓄ができているか」を聞いたところ、「0万円(貯蓄がない)」と答えた人が23.1%もいたのだ。30代、40代の4人に1人が無貯金である。貯金「1万~50万円」と答えた24.6%、同じく「50万~100万円」の12.8%と合わせると、貯金100万円以下の割合は6割を超えた(SMBCコンシューマーファイナンス「30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019」より)。
現在の40代は最初の就職氷河期世代であり、正社員になれずに非正規雇用に甘んじた人が多く、20年前の40代と比べて平均年収が低く抑えられてきたことは、これまでに幾度も指摘されてきた通りだ。その下の30代も日本経済自体の伸び悩みや、リーマン・ショックなどのあおりを受け、収入の伸びは鈍いまま。無貯蓄になっている要因としては、「貯蓄できるほどの収入がない」あるいは、「貯蓄するより使っている」とも考えられる。
「お金があるだけで人は幸せになれるのか」──そう疑問を感じ、自らの実践を通して、“お金に頼らない生き方”をしている人がいる。落語立川流の真打・立川こしら、その人である。
21歳で立川志らくに入門。2012年、37歳のときに真打に昇進した。そのころから、地方公演を頻繁に行うようになり、ネットカフェやビジネスホテルを泊まり歩くように。40歳のころには賃貸契約していた部屋を引き払い、「アドレスホッパー」(家を持たずに各所を泊まり歩いて生活する人々)としての生活を送っている。
その生活ぶりは、立川こしら氏の初の著書『その落語家、住所不定。~タンスはアマゾン、家のない生き方』に詳しい。衣類はアマゾンで購入して、基本的に使い捨て。仕事先の近くのビジネスホテルに泊まり、行きたいところに行き、見たいものを見て、人と会っては酒を飲む。眠くなったら新幹線や電車、飛行機で移動する。荷物はバックパックひとつだ。そんなこしら氏に会い、話を聞いた。