【著者に訊け】大山顕氏/『立体交差 ジャンクション』/2500円+税/本の雑誌社
ゾワッ、とするかどうか。何事もマニアになれるかどうかは、おそらくそれを見る人の「体質」で決まる。
本書『立体交差』にしても、その文字面だけで「!」とくる人もいれば、「?」と思う人もいて当然。著者・大山顕氏はむろん前者だ。団地や工場鑑賞の先駆者でもある「ヤバ景」愛好家が厳選した名ジャンクションの写真114点と、その歴史的、社会学的考察「立体交差論」から成るこの写真集は、たかが立体交差、されど立体交差と言いたくなるほど奥の深い土木インフラの世界へと読者を誘う。
本論でのキーワードは〈緩衝地帯〉〈最適化〉など多々あるが、それらがより安全で平穏な社会を期して人間が造った産物であることを、ヤバい景色たちは再確認させてくれる。
「まずはヤバ景の定義から説明すると、例えば英語のbadにはクールという意味もあるように、僕は『ヤバい』に両方の意味を込めています。工場や団地はもちろん、田畑や雑木林も相当ヤバいと思うんです。
でもみんな田畑は褒めても工場風景は褒めず、しかも実際は人が手を相当かけている田園風景を自然だと本気で思ってる。それこそ〈景観問題〉を議論しようにも、ベースとなる教育も知識もないまま感覚論や感情論に終始していて、日本人はまだ景観を語れる段階にないと思うんです。だから僕はこの〈立体交差論〉を書き、感覚も理論も両方網羅した、よりフラットな見地から、この国の景色を見直したかったんです」