◆個人資産を合算し老後に備える

 前述したように、多くの国では国民の高齢化が進む中で年金財政が危うくなっている。そして、その中でも最も深刻なのが日本である。今後は年金のさらなる減額や支給開始年齢の65歳以上への引き上げは不可避となるだろう。

 その一方で、個人金融資産は2018年12月末時点で1830兆円に積み上がっている。これが将来に対する“漠たる不安”で「いざという時のため」に銀行などにじっとしていて市場に出てこないから、日本の景気が上向かないのである。

 では、どうすればよいのか?

 私は、個人の資産を一本化して、年金をもらわなくても老後のファイナンシャルプランが設計できる金融システムが必要だと思う。

 具体的には、預貯金、生命保険、株や債券、不動産などをすべて合算し、その金額を定年退職してから年金を受給するまで給料のように月々、あるいはかつての「一時払い養老」のように一括で支払い、その収入に対しては課税しないインセンティブを付ける、という仕組みである。不動産の「リバースモーゲージ」は、自宅に住み続けたまま、自宅を担保にして老後の資金を借りるローン商品だが、それに金融資産まで加えたものをイメージしてもらえばよい。

 支払う金額や年金支給開始年齢を何歳に設定するかという方程式は、金融機関がAI(人工知能)で計算する。そして、もしその人が想定よりも長生きしたら、そこから先は従来の年金をもらえるようにするのだ。

 そういう選択肢を作れば、日本人の多くは将来に対する“漠たる不安”がなくなって年金受給者が減り、国の年金債務はざっと7割くらい消えるのではないだろうか。

※週刊ポスト2019年4月26日号

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