テレビ東京の“飯テロ”ドラマが進化中だ。新ドラマ『きのう何食べた?』が話題を集めている。テレビ解説者の木村隆志さんが、“飯テロ”ドラマのこれまでとこれから、そしてテレ東が制作を続ける背景について解説する。
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4月5日のスタートから『きのう何食べた?』の勢いが止まりません。ツイッターの世界トレンド第1位になり、見逃し配信の再生回数が過去最高を記録し、ツイッターのフォロワー数が早くも10万人を突破。クチコミサイトの評判を見ても、ドラマ識者たちのコメントを見ても称賛が多く、早くも「今期イチ」の声があがっています。
『きのう何食べた?』は、弁護士・筧史朗(西島秀俊)と美容師・矢吹賢二(内野聖陽)の同居生活を描いた作品。番組名からわかるように、物語は食卓を中心に物語が進んでいきますが、深夜のグルメドラマはテレビ東京の十八番である“飯テロ”の系譜です。
驚かされるのは、西島さんと内野さんという大物名優の共演で、しかも同性愛をモチーフにしていること。
これまでテレビ東京は、中年男性がひたすら食べる『孤独のグルメ』から、OLが一人酒をたしなむ『ワカコ酒』、ひたすら食べる謎の女性を描いた『たべるダケ』、刑事がB級・C級グルメを熱く語る『めしばな刑事タチバナ』、極道が手料理を振る舞う『侠飯~おとこめし~』、銭湯とお酒とつまみにフィーチャーした『昼のセント酒』、仕事をサボってスイーツを食べる『さぼリーマン甘太朗』、グルメで失恋を忘れようとする『忘却のサチコ』などを放送してきましたが、今作は「飯テロもついにここまで進化したか」という驚きであふれています。
『きのう何食べた?』は、これまでの“飯テロ”とはどう違うのでしょうか? さらに、改めて“飯テロ”は、なぜ人気が続き、今後はどうなっていくのでしょうか?
◆動画レシピサイトのような魅力も
『きのう何食べた?』の原作は、『西洋骨董洋菓子店』『大奥』などで知られる、よしながふみさんの漫画であり、すでに15巻が発行された人気作。ゲイカップルのほのぼのとした日常を描くとともに、周囲へのカミングアウトや両親との関係性など、LGBTの抱える問題点にもふれる骨太な一面を持ち合わせています。
これまでの“飯テロ”は、ゆるさを売りにし、あえてストーリー性を重視しないものが多かったのですが、昨年放送された『忘却のサチコ』がそうだったように、近年はストーリーとグルメが補完関係となる作品がジワジワと浸透。その点、『きのう何食べた?』は、“飯テロ”らしいゆるさを保ちつつも、男女を問わずカップルに大切なことを描き、社会的な問題にも迫る作品となっています。
もちろん“飯テロ”である以上、グルメがおいしそうに見えなければ意味がありませんが、当作はその点でも進化。原作漫画が『マツコの知らない世界』(TBS系)の「マンガ飯の世界」で“レシピ本として使える!おすすめマンガ”の1位に選ばれるなど、「見ておいしそう」というだけでなく、「作ってみたい」と思わせる作品であり、ドラマ版も食事中のシーンに加えて、料理中の手元をじっくり映すなどの演出で、その長所は失われていません。つまり、動画レシピサイトのような魅力もあるのです。
◆テレ東の“飯テロ”はますます細分化へ