ライフ

【池内紀氏書評】「おことば」の分析から浮かび上がるもの

『平成の終焉 退位と天皇・皇后』/原武史・著

【書評】『平成の終焉 退位と天皇・皇后』/原武史・著/岩波新書/840円+税
【評者】池内紀(ドイツ文学者・エッセイスト)

 元号フィーバーといった騒ぎようだが、それ以上は何も知ろうとしない。天皇制とは空気のようになじんでいるのに、天皇家については関心の外なのだ。怠惰な国民になりかわって、政治思想史を講じる学者がわかりやすく、いかにして「平成」が終焉を迎えたかを説いてくれた。

 天皇の生前退位を望む「おことば」がそもそもの始まりだった。だから第1章は「『おことば』を読み解く」。おかげで全文にわたり、天皇の文章を読むことができる。古風で、きちんと筋道をたどり、平易で、品格のある良質の日本語である。

 政治情勢に触れない制約のなかで、主張すべきことは主張して、その上で「国民の理解の得られることを、切に願っています」と結ばれている。宮内庁のホームページに全文が公開されているが、はたして国民のどれだけがあたってみただろう。

「おことば」の背景と、分析を通して、さまざまな問題点が浮き出てくる。戦前戦中の昭和天皇は姿を見せない現人神だった。戦後、人間宣言をして全国を巡幸したが、多少とも現人神が世俗にそまったという程度だっただろう。国民自体が対処の仕方を知らなかった。おそれかしこみ、土下座して、やりすごした。

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
女性セブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン