ただ、この感覚は実戦の中でしか鍛えられません。相手バッテリーだって走られたくないし、セカンド・ショートもアウトを狙って塁に入る。そういった総合的な感覚は練習ではどうしても身につかないから、試合で養うしかないんですわ。
ボクが実戦で養った感覚は、世間の常識とは違うことも多い。たとえば、左ピッチャーのほうが盗塁しにくいと言われるけど、ボクはむしろ右ピッチャーのほうが難しかった。左は牽制が来るか分かりやすいが、右はグローブの位置が見えないから、ターンが速いピッチャーは厄介やったね。
何年も盗塁王を獲り続けるためには、まずはレギュラーを張って常に出塁することが必須条件。出塁率を高めるには、ストライクだけを打ったらええ。それだけや。ボールを打たなければ最低でも打率2割5分、見極めてフォアボールを選べば出塁率はもっと上がる。
その上で、ボクは「常に次の塁を狙ってやろう」という“欲”を持ってやってました。それもバッターのことを考え3球以内にね。そんな気概を持った選手が出てきてくれたら嬉しいね。
※週刊ポスト2019年5月3・10日号