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薬のプロの半数が述懐「効かないのに…と思いながら薬を処方」

65才以上が処方されている薬の種類

 日本人の平均寿命は過去最高を更新し続け、現在は女性で87才を超えた。その数字は、香港に次いで世界で第2位だ。

 日本人が世界で最も健康的な国民である理由の1つとして、多くの人は「医療の質の高さ」を挙げる。たとえば、病気に罹ったとき、「海外の病院で診てもらいたい」「外国製の薬剤をのみたい」と考える日本人がどれだけいるだろうか。それだけ、日本人は「日本の医療」を信じている。

 特に、日本人はとにかく薬をよくのむ。それは「薬信仰」とさえいえるほど熱心だ。

 たとえば、近年にインフルエンザになった人の多くがのんでいる特効薬タミフル。実は、世界中のタミフルの約8割は日本で消費されている。日本人も外国人も、等しくインフルエンザに罹るのに、薬をのむのは日本人だけ。欧米ではインフルエンザでは基本的に薬は不要とされ、家で安静に寝ていることが推奨される。タミフルをのんでも、期待できる効果は「1日早く熱が下がるかどうか」で、日本人がなぜそんなに熱心に抗インフル薬をのむのか、海外では理解されないという。

 日本人研究者が世界の医薬品研究開発をリードしているのも、日本人の薬への信頼感を増しているだろう。京都大学特別教授の本庶佑氏が、最近実用化された話題のがん治療新薬「オプジーボ」の開発に貢献して、ノーベル賞を受賞したことは氷山の一角。日本の医薬品の研究開発能力は、アメリカ、イギリスに次いで第3位だという。

 日本人全体が1年間に使う医療費は42兆円を超え、うち2割を超える約10兆円が薬剤費だとされる(2017年度)。1人当たりの医薬品費等支出はアメリカ、スイスに次ぐ世界3位だ。薬剤師の数は人口1000人当たり1.8人で世界1位。2位のベルギーとスペイン(1.2人)を大きく上回っている。

 日本人は、1人当たりが服用する薬の「種類」もきわめて多いのも特徴だ。

 厚労省によると、74才以上の4人に1人が、1か月に7種類以上の薬剤を処方されている。40~64才の世代でも5人に1人が5種類以上の薬を受け取っているという。

 ちなみに、海外では「1度の診察で1種類の処方」が基本だ。アメリカの研修医の教科書には「4種類以上のむ患者は、副作用で危機的状況にある」と書かれている。

 とはいえ、「必要な薬をしっかりのんでいるから日本人の寿命は長いのではないか」と考える人もいるだろう。

 それでは、長寿ランキング世界1位の香港の薬局をのぞいてみよう。日本のドラッグストアや薬局とは大きく違い、いわゆる「西洋薬」ではなく、「漢方薬」がズラリと並ぶ。香港では、薬に頼る前に、体にいい食べ物や漢方を駆使して健康を保とうという「医食同源」の考えが根付いており、日本人のように気軽に薬をのんだりはしない。

 つまり、「薬をたくさんのむ=健康になる」というわけでは決してないのだ。

 今回、本誌・女性セブンは薬のプロフェッショナルである医師や薬剤師の計200人に大規模なアンケート調査を実施した。その中で、日本人が知らない「薬の真実」が浮かび上がってきた。たとえば、

〈これまでに『実は効かないのに』と内心思いながら患者に薬を処方、または購入を促したことはありますか?〉

 という質問に対し、「ある」と答えた薬のプロは、なんと半数にのぼった。驚きの数字ではないだろうか。

 日本人の間でも、薬に対する不信感がないわけではない。

 医療従事者の派遣サービスなどを展開する「総合メディプロ」が’15年に行った調査では、「処方された薬について『効果があまりない』と感じたことがある人」は約6割にのぼった。さらに、ある製薬会社の調査によれば年間400億円分の薬が、処方されたにもかかわらず捨てられているのだという。

 今、日本人と薬の関係が、見直される時がきている。

※女性セブン2019年5月23日号

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