【書評】『ザ・ギース尾関の「娘の絵を完コピ!」 おえかきキャラ弁』/尾関高文・著/永岡書店/1200円+税
【評者】森永卓郎(経済アナリスト)
本の世界では、ときどき想像を絶する作品に出合うことがある。本書もその一つだ。
本書は4歳の娘のために、父親が作った弁当のエッセイ付き写真集だ。ただし、その弁当は普通ではない。娘が、「こんなお弁当を作って」と描いたキャラクターを、完全に再現した弁当なのだ。幼児が描く絵だから、当然、滅茶苦茶な絵になる。それをチーズや海苔などを使って、完コピする。その再現性の高さは、驚くばかりだ。
著者であり、お弁当の作者でもある尾関高文氏は、最近急速に人気を高めているお笑いコンビ、ザ・ギースのボケ担当だ。若手芸人の生活は厳しく、共稼ぎで生活を支える妻の負担を少しでも軽くしようと、娘の弁当作りを始めたのだそうだ。
著者に絵心があったから、そうした取り組みを始めたと思われるかもしれない。だが、私は逆だと思う。もし絵心があったら、娘の絵の特徴をつかんで、娘の絵とは、異なる作品を作っていたはずだ。似顔絵の名手が、極端なデフォルメをして、まったく本人とは異なる似顔絵を書いてしまうのと同じだ。尾関氏のお弁当は、逆で、一切のデフォルメがない完コピだ。