事故物件に住み続ける芸人・松原タニシ
●「外壁に顔のようなシミ」(写真左下)
大阪府吹田市で内見に行った物件。郊外で駅から遠いとはえ、3LDKで3万円代という破格の家賃設定がされていた。
「口をへの字に曲げた、たれ目のお化けの顔のようなシミがありました。この壁の向こう側がトイレになっているんですが、トイレで女性が首吊り自殺をしていたそうなんです。女性には旦那さんがいたんですが、単身赴任でしばらく家にいなかったそうで、久しぶりに帰ってきたら妻が変わり果てた姿になっていた。遺体は腐敗が進んでしまい、溶けてトイレと一体化してしまっていたそうです」(タニシ)
目と口のように見える部分は、水漏れ防止のために黒色のボンドのようなものでひび割れを埋めたもの。どこかユーモラスな表情だが、我々に何かを訴えかけているようにも見える。
●「バツ印で封印された玄関」(写真右下)
「怪談イベントで香川県に行った際に知り合いが、『最近、事故物件になったアパートがあるから見にいきませんか?』と連絡をくれたので、行ってみました。ここまで生々しいとは思わなかったので、言葉が出なかったです。ドアノブ周辺が黒っぽくなっているのは、指紋を採取するために警察が使ったアルミニウムの粉ですね」(タニシ)
バツ印で封印された扉の向こうは、いったいどうなっているのか。事件直後ということは凄惨な光景がむき出しになっている可能性も高いが、この部屋もしばらくすると、“事故物件”として賃貸市場に出され、再び誰かが住み始めるのである。
確かに安いとはいえ、事故物件が抱える闇はかように深い。これを「リーズナブル」と解釈できるかどうか、かなり票は割れそうである。
【PROFILE】松原タニシ(まつばら・たにし)/1982年4月28日、兵庫県生まれ。松竹芸能所属。”事故物件住みます芸人”を名乗り、さまざまな物件を渡り住んでいる。昨年、初の著書である『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房)を発売。現在、『やわらかスピリッツ』にて『ゼロから始める事故物件生活』(作・奥香織、小学館)の原案を担当。今年3月には第1集が発売された。
◆取材構成・西谷格