警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、米軍の航空機事情について元大佐が語る。
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「戦闘機のパイロットで一番、技術があるのは空軍のパイロットじゃない」
インド洋上で海上自衛隊の護衛艦「いずも」の隊員たちが、フランスの原子力空母「シャルル・ド・ゴール」の艦載機の発着艦訓練の様子を視察しているニュースを見て、米軍の元大佐に取材した際にこんな話をしてくれたことを思い出した。
戦闘機のパイロットと聞いて、まず思い浮かぶのは空軍ではないだろうか。自衛隊なら、パッと思い出すのは航空自衛隊のブルーインパルスが見せる華麗なアクロバット飛行だ。ところが、最も高い飛行技術を持つのは空軍ではないというのだ。
「空軍が発着するのは陸の上だろう。陸は当然、動かない。でも空母は動いている。ゆっくり動いているように見える空母でも、実はかなりの早さで進んでいるし、揺れもする。広い海の上では、空母なんてほんの小さな点にすぎない。機体の姿勢、進入角度、進入するコースと速度がわずかでも違えば…」
元大佐は両手を広げて肩をすくめてみせた。停止できずに空母から落ちるか、艦上に衝突するか、それとも海上に叩きつけられるか…。どちらにしろ大事故につながりかねない。
実際、米海軍横須賀基地を視察し、停泊中の原子力空母「ジョージ・ワシントン」に乗船させてもらったことがある。艦内は迷路のようで、倉庫や甲板は公園のように広く平らだった。事実上、空母化が決まっており、戦闘機が発着艦できるよう改修されるという「いずも」も同じだが、戦闘機を着艦させるとなれば、広く長く見える甲板の距離ですら、あまりに短いものとなる。
「だから空軍のパイロットはそこから飛び立つことはできても、動いている艦に着艦させることができない。特に暗闇での着艦は目視が利かないから困難になる。着艦できるのは海軍と海兵隊のパイロットだ。技量が一番あるのは海軍、技量に加えてガッツがあるのが海兵隊になる」
トム・クルーズ主演『トップガン』が、空軍ではなく海軍のパイロット養成訓練学校を舞台としているのはそのためだという。
「戦場でさらにリスキーなのは偵察機さ」
最も危険なのは戦闘機だと思っていたが、実際は違うらしい。
「戦場に最初に行くのは偵察機だ。最初が一番、危険なのさ。偵察機は小さくて高速で飛ぶため、機体は軽いがその分、機体自体が薄くできている。戦闘機のような武器も搭載していないから、迎撃されて撃たれたら落ちるしかない。偵察機のパイロットも高い技術が必要になる。有事では、どのパイロットもリスクを承知で飛び立つけどね」