その怒りは思いのほか強く、ネット上でのバッシングだけにとどまらず、『あいつをやめさせろ』と会社にまで抗議の電話がかかってきたという。
「怖いのは、家族にまで害が及んでしまうこと。実家が飲食店をやっているので、万が一、『あそこの店の食べ物にはゴキブリが入っていた』などと口コミサイトにウソの書き込みをされようものなら、家族にまで迷惑がかかってしまうと、彼女は困り果てていました。
そんな書き込みは、見なければいいじゃないか、と周りからは言われますが、私は自分が知らないところで、知らない人に悪口を書き込まれ、名前も顔も知られてしまっている事実が恐ろしくてなりません」
◆【解決法】SNSで被害を公表する
具体的な実害が発生していない場合は、「無視するのがいちばん」と言うのは、インターネットトラブルに詳しい『グリー』社会貢献チーム・マネージャーの小木曽健さん。
「単なる好みや趣味嗜好の分野なのに自分の意見と異なるからといって、個人攻撃までする人は、正直まともじゃありません。仮に顔写真が拡散しても、第三者がそれに興味を持つことはありませんし、むしろ変な人に絡まれて気の毒にと思うぐらい。容姿批判や荒唐無稽な言いがかりも面白がっているのは当人だけ。第三者からは失笑されるような行為なので、相手にしないのが賢明です。個人情報を公表されても、それを悪用してさらなる嫌がらせをする人間はまれ。もしも実害が発生したら、警察に被害届を出すなどして、法的に償わせればいいのです」(小木曽さん)
自身もネットトラブルに巻き込まれ、100万回を超す殺害予告を受けたことのある弁護士・唐澤貴洋さん(41才)もこれに同意見だと言う。
「消極的に思えるかもしれませんが、攻撃してくる人間と同じ土俵に乗ってはいけません。彼らは反応をすると、喜んでさらに攻撃してきます。大切なのは、ネタを与えないこと。投稿はしばらく休んで、SNSから遠ざかると、相手もネタがなくなるので、攻撃をしなくなりますよ」(唐澤さん)
個人情報が流出するのは気持ち悪いが、ほとんどはそれによって実害は生まれない。それでも誹謗中傷がやまない場合は、次のような手段に出るといい。
「自分のSNSのトップページやプロフィール欄に、『今、ネット上で私にまつわる誹謗中傷やねつ造が出回っています。まったくのウソなので、無視してください。関係機関と連携しながら、被害届や訴訟の検討、準備を進めています』と投稿するのです。誹謗中傷している人たちは攻撃している人のSNSも気になりのぞきに来ます。そこで逆に脅しをかけるのです。この方法で嫌がらせが減ったケースはたくさんあります」(小木曽さん・以下同)