政府は、6月11日発表の「経済財政の基本方針(骨太の方針)」で、働く高齢者の年金を減額する「在職老齢年金制度」(在老)の“廃止”を打ち出した。
現在の在老制度では、60~64歳までは月給と年金の合計収入が28万円、65歳以上は47万円を超えると働き続ける限り年金がカット(支給停止)される。早ければ2021年に廃止となる。それによって「得する年金術」の常識も大きく変わる。
とりわけ特別支給の“得する年金”をもらえない現在58歳以下の世代にとっては年金の「繰り上げ受給」を巡る判断に大きな影響が出る。
この世代は65歳からしか年金をもらえない。ただし、年金額が30%減ることと引き換えに60歳まで繰り上げることは選択可能だ。
たとえ額が減っても、早く年金を受け取りたいというニーズは少なくない。定年後に最もお金がかかるのは60代前半だからだ。総務省「家計調査」(2018年度)によれば、60代前半の月間消費支出(2人以上世帯)は30万円超だが、70代後半は23万円台まで低下する。
ただ、これまで繰り上げは選びにくかった。最大の原因が在職老齢年金だ。社会保険労務士の蒲島竜也氏が語る。
「60代前半は体もまだまだ動くから、働き続けるのが一般的。しかし、働きながら繰り上げ受給をすると、在職老齢年金によるカットと繰り上げによる減額のダブルパンチを受けることになる。そのため二の足を踏むケースが目立った」