皮膚が過剰に乾燥すれば、防御反応としてかゆみの神経が伸び、かゆみを感じやすい“かゆみ過敏”になる。かき壊すとさらにバリアが破壊され、皮膚感染症などのリスクも。何より皮膚の乾燥やかゆみが続く不快感は、意外に大きなストレスだ。
「特に高齢者にとって、皮膚の乾燥やかゆみが不安感やイライラにもつながります。そして逆に精神的なストレスが強いと、皮膚の乾燥が進むこともわかっています」
◆夏こそこまめな“保湿“を忘れずに
高齢者の乾皮症は、外気が乾燥する秋から冬にかけて注意喚起されるのが一般的だ。秋冬に比べて湿度が高くなる夏は、皮膚の乾燥もやわらぐような気もするが、実はリスクが続く人も多いという。
「皮膚が外気から水分を吸収できるのは、湿度が80%くらいから。それは相当に不快で、実際には潤いを保てるほどの湿度が続くことはほとんどありません。また夏場の建物の中はエアコンでかなり乾燥しています。屋外で汗をかいて屋内で急激に汗がひくと乾燥が進みます。
そして何より皮膚へのダメージが大きい紫外線も強くなる。夏の皮膚の乾燥リスクは決して低くないのです。ちなみに汗の水分が蒸発した後に残る老廃物でかゆみ・皮膚炎(汗かぶれ)が起きるのも、実は皮膚が乾燥してバリアが壊れているせい。あせも・汗かぶれ対策にも保湿が重要なのです」
さらに、こんな落とし穴もある。中年くらいまでは、スキンケアといえばシミ・しわなどをケアする美容の意味合いが強く、高齢になったら重要ではないと思いがちだが、保湿は美容の基本であるだけではない。体を守る皮膚のバリア機能を正常に保つための基本でもあるのだ。
「生まれたての赤ちゃんの時からしっかり皮膚を保湿することで、成長してからのアレルギー体質のリスクを大幅に減らすことができるというデータもあります。高齢になれば一様に皮膚の機能は落ちるので、年を重ねるごとによりいっそう、そして一年を通じて、保湿には力を入れるべきなのです」
※女性セブン2019年7月4日号