「MRIで撮影した脳の断面図と照らし合わせた結果、脳の白質内に存在する毛細血管が消失する『白質病変』が発生している人は、交通事故を1.67倍起こしやすく、交差点の事故に限れば3.35倍にも上がることがわかりました。『白質病変』が起きることで、脳が運転に必要な情報量を処理できなくなり、反応が遅れていると考えられます。現在、私の手元には2万人分の脳ドックデータが蓄積されていて、加齢だけでなく、喫煙や飲酒、生活習慣病などにより、同じ年齢でも症状に差が生じることも判明している」(同前)
MRI検査に加え、作業療法士チームがドライブシミュレータによる検査と高次脳機能検査を行なう。
ドライブシミュレータを使った検査では、画面の映像に応じてハンドルやアクセル、ブレーキを操作する。反応動作の速さやムラをはじめ、発進停止、安全確認、走行位置、速度などを判定し、AからEまでの5段階で評価が出る。
高次脳機能検査は、「今日は何年何月何日か」「100から7を引き続けなさい」といった質問に答え、記憶力、言語力、流暢性、注意力などが100点満点で評価される。90点以上で正常となるが、どの項目に問題があるかも明確になる。
この3つの検査結果を総合的に判断して、朴医師が運転の「適応」「不適応」を判定する。警察から受診を課された人が「不適応」と判定された場合は基本的に免許返納となるが、回復の可能性がある場合はリハビリで運転能力向上を目指す。「適応」と診断された場合は免許センターで運転免許証が交付され、希望する場合はリハビリを受けられる。任意の受診者も返納義務などがないこと以外は、同じ流れとなる。
※週刊ポスト2019年7月5日号