おそらく、多くの視聴者がこのドラマに求めたのは、言葉で単刀直入に愛してるなどと言わなくても、ふと互いを思いやる関係、それを伝えるしぐさや行為だったのでは。
すれ違いそうな時、何気ないそぶりで仲直りの仕方を教えてくれる。気づいた相手も素直に気持ちを受けとってくれる。ささやかだけれど大切なこと。現実の中では否定されることが多い世の中。いつもここがダメ、あそこが足りないと、他人も自分もダメ出しばかりの中で生きる私たち。
しかしこのドラマは「そんなケンジでいい」「どんなシロさんでもいい」という肯定が底に流れています。必要なのは完璧さではなくて、ふわっと包み込む暖かさ。多少波風が立ったり、けんかしたり、すれ違ってしまっても、修復していけるという根本的な明るさ。
「豊かな食卓」とは、高価な食材やゴージャスな料理が揃うことではない。
2人で美味しいね、と笑いながら食べる食卓のこと。それがあればたいていの問題は乗り越えていける──究極の真実を『きのう何食べた?』というドラマは教えてくれていました。