結局、不甲斐ない私はクリエーターにクレームを入れることもできず、一人でイライラして、もうその人に何か頼むのは止めようと決意しただけであった。
なぜ自分の行為がいけないのか、彼にはわからないだろう。別にホテルに行こうといったわけではないし、みたいな反論をされそうだ。若い頃からずっと、男尊女卑&上下関係重視&飲みニケーション当たり前で24時間戦ってきた世代には、大きく変わった世の中の意識から取り残されている人が多い。
ハラスメントとは相手が不快に思うかどうか。きっちりとした線引きがあって何がいけないのかが明文化できるものではないから理解できないだろうし、だからしようともしないのだ。
とにもかくにも想像力だと私は思う。相手の立場や事情を想像して接することが、どんな研修より大切である。
とはいうものの、バブル世代と呼ばれる私たちもとても危うい。身体に染み付いた昭和の感覚がつい顔を出してしまうこともある。
先日、同世代の編集者と話していてふと気がついた。
「最近、打ち合わせもメールのことが多いですよねえ。短い原稿ならわかりますけれど、連載とかそれなりにボリュームのあるものなら、会って無駄に話したほうがいいと思うんですけどね」
わっ、これって件のクリエーターの「挨拶に来い」と同じかもしれない。正直、こういう瞬間は焦る。物語を膨らませるには編集者と無駄に話すことも必要なことには変わらないけれど(物書きも自動販売機じゃないので、過程が要る)、まずは相手の都合や感情を優先しなければと反省した。
昭和生まれがあちら側に落っこちないためにぼんやりしていられない。