◆塾の宿題は全部やるより“選んで解く”
「宿題が終わるまで寝ずに頑張る」「やってこなかったらみんなの前で叱られる」──こういった光景は過去のものになりつつある。
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表で塾ソムリエの西村則康さんは、「学校の宿題はすべてこなす必要があるが、塾の宿題はやみくもにこなすよりも、取捨選択ができる子供の方が伸びる」と言う。
「今、多くの塾に通っている子供が抱えている問題として『あたふた学習』があります。問題文をクイズの早押しのようにパッと見るだけで答えを書こうとしたり、明らかに間違っているとわかっていながら、そのまま計算を進めようとしたりする。とにかく何かに追われるように“あたふた”と勉強するのでそう呼びます。
今の子はこなすべき課題が多すぎる。宿題をやり終えること自体がゴールになり、問題を理解して最後まで解くという、最も重要なことがおろそかになっているのです」
これまでに試験で出題された問題は“過去問”となり、どんどん累積されていく。学習塾はそれに対応した解き方を教え、さらに学校側も新しい問題を出題する。そんないたちごっこの末、塾のテキストはどんどん膨大になり、とてもすべてをやりきることは不可能なほど増えていくのだという。
「子供は真面目ですから、出された塾の宿題を全部やりたいと思ってしまうし、全部こなさないと厳しく叱る大手塾もある。それによって“空欄を埋める”だけが目的になる子がいるのが問題なんです。それよりも、すでに理解できている問題は切り捨て、“同じ問題が出た時、ちょっと危うい”ような微妙な理解度の問題を復習するなど、時間の使い方を判断して取捨選択する力が必要になっているのです」(西村さん)
この判断力は宿題のみならず、新テストに立ち向かう学力としても求められる力でもある。
「スマホがあれば何でもすぐに調べられる現代において、知識の蓄積は今後どんどんAIが担うようになる。むしろ膨大な知識の中から何をどう選んで活用するかを問う“思考力”“判断力”“表現力”などが重要視されるのです」(飯嶋さん)
実際、難関といわれる中学入試を突破した生徒の中には、最初にテストの問題をすべてチェックし、「捨てる」問題を決定する方法をとる生徒も多くいる。「捨てる」力も必要なのかもしれない。
※女性セブン2019年8月1日号