第9話「歳末の候」より。単行本では鮮やかなフルカラーで収録されている
あの時の僕にとって、おせちはおいしいものではありませんでした。でも、今思うとすっごく作るのが大変だったことが分かります。僕は包丁すら握れませんから。そういうことを一気にぶわーっと思い出して、改めて母の深い愛情を感じました。
読者にとって立ち止まるところは違うかもしれませんが、また歩き出す時には心の中に温かみが残る作品ですね。きっと年配のかたが読んだら、自分が母や父をしていた頃の記憶が呼び覚まされるはず。
最初は猫たちのルックスの可愛らしさからこの本に入り、「眼福だな~」と感じていたのに、いつのまにか、ぐんぐん内容に惹きつけられていました。毎日猫の写真を撮り続けている僕が、猫たちのしぐさに目がいかず、昔のことを考えているんです。吸引力はかなりのものです。
【Profile】
猫写真家・沖昌之さん●1978年生まれ。主に外猫を撮影し、猫の自然な姿をとらえた写真が人気。写真集に『ぶさにゃん』『必死すぎるネコ』『明日はきっとうまくいく』など。
※女性セブン2019年7月18日号