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社会に適応できず“人間廃棄物”として排除される「下級国民」の現実

「ゆたかで平和で快適な社会」の犠牲者はどうなるか(イメージ)

 2019年4月に東京・池袋の横断歩道で87歳の高齢男性が運転する車が暴走して母子をはねて死亡させた事件で、事故を起こした元高級官僚が逮捕されないことから「上級国民」という言葉が一躍脚光を浴びた。その後も、この言葉は下火になるどころか、日本社会を「上級国民」と「下級国民」に分けて論じる風潮は続いている。

「一億総中流」なる言葉はとっくに死語となり、いまや中間層は崩壊、「上級/下級」に分断された格差は拡大するばかり――というのが多くの日本人の本音かもしれない。新刊『上級国民/下級国民』(小学館新書)で、そんな「不都合な真実」について論考を重ねたのが、作家の橘玲氏だ。

 橘氏は同書で、ポーランド出身で各国を渡り歩き、イギリス・リーズ大学の社会学教授を務めた故ジークムント・バウマン氏の著書『リキッド・モダニティ 液状化する社会』や『廃棄された生 モダニティとその追放者』を紐解き、「下級国民」としてこぼれ落ちていくひとたちについて、次のように考察する。

「バウマンは、第二次世界大戦後の後期近代では伝統的な共同体は解体し、ひとびとが液状(リキッド)化すると考えました。そして、ゆたかで自由な『液状化社会』からこぼれ落ちた人たちは『人間廃棄物(wasted humans)』だと述べました。──この翻訳は間違っているわけではありませんが、強烈すぎるので私は『ポイ捨てされるひとびと』としています。

 大量の商品が生産・流通するゆたかな社会では、ゴミの量も増えていきます。ゆたかさと大量廃棄はトレードオフで、『どんどんゆたかになるのにゴミは減っていく』などということはあり得ません。もちろんすべてのゴミが廃棄されるわけではなく、リサイクル処理場で“再生”されるものもありますが、それもできない場合は最終処分場に送られる。バウマンは、とてつもないゆたかさを実現した後期近代=リキッド・モダニティでは、人間に対しても同じことが起きているといいます」

 AI(人工知能)をはじめテクノロジーの進展にうまく適応できないひとたちが増えている。本来、技術の進歩に伴って社会全体はゆたかになるはずだが、実際にはそれが進めば進むほど排除されるひとが増えている、と橘氏はいう。

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