国立印刷局が発行する官報には入札情報から破産情報まで、直近30日以内の情報が掲載され、誰でもウェブサイトで閲覧が可能だ。それ以前の情報に関しては、公営図書館の端末や、有料の官報情報検索サービスで閲覧できる。しかし、勤務先の記載はなく、もちろん「融資希望額」などが掲載されることはない。都内の名簿業者は「貧困者データベース」が、複数の情報を寄せ集めて作られた「脅迫サイト」である可能性を指摘する。
「官報の破産情報の他に思い当たるのが、闇金業者から流出した名簿です。時には、倒産した街金業者から利用者の氏名や住所が出ることだってあります。特に多重債務者の情報は、違法金融業者の間で日々、やりとりされており、ダイレクトメールや電話で営業をかけるために使われています。勤務先や希望融資金額は、これらのデータに載っている情報に他なりません。こうした複数のデータを寄せ集めてサイトを作ったのでしょうが、情報の鮮度という意味で言えば、悪用するには使い物にならないというか…」
業者の証言を裏付けするために、貧困者データベースの情報十数件について、住宅地図情報や登記簿謄本を取得し居住実態の確認を取ったが、そのほとんどが転居済みなど、直近のデータではないことがわかった。調査したうちの三件は居住実態があったものの、当事者が死亡している、もしくはMさんのように消費者金融や街金の利用経験があるということであった。
貧困者データベースの「運営者」を名乗るツイッターアカウントに接触したが、返答がないうちにアカウントは消えた。運営に関与していると見られる男性の名前を元に、関係先と思われる住所を調べたが、やはり法人実態、居住実態共に確認はできなかった。
どんな目的を持って開設されたサイトか不明ではあるが、個人の名誉を踏みにじる悪質なサイトであることは言うまでもない。情報化が進む社会の中で、いつ何時、自身の情報が漏れて悪用されるかわからない。たとえ陳腐だとはいえ、こうした悪意に対峙した時、パニックになるのではなくまずは公的機関へ相談するなど、冷静な対処が望まれる。