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実録「実家が420万円還付金詐欺被害」 僕は絶句し母はキレた

証拠のイエ電を指さすA氏(イラスト/ヨシムラヒロム)

証拠のイエ電を指さすA氏(イラスト/ヨシムラヒロム)

 いつもはネット番組についてのコラムを執筆しているイラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏。しかし、今回は実家で起きた「還付金詐欺」騒動の顛末をお届けする。総被害額420万円にヨシムラ家は激震。電話で「オレオレ」と名乗り、お金を振り込ませる詐欺が社会問題化してから約20年。十分に世間に知られていると思っていた振り込め詐欺についての情報が、ターゲットとなる年齢層に届いていなかったことを痛感させられた出来事について、ヨシムラ氏がレポートする。

 * * *
 8月13日21時02分、事務所でマンガを読んでいるとLINE電話が鳴った。画面を見ると母からの着信、どうせ面倒な頼みごとだろうと僕は通話ボタンを押した。「なに?」と問いかければ、「ちょっと大変なことが起きた……」と電話口で震える母。「すぐに自宅に帰ってきてほしい」と続く。事務所から実家までは自転車で数分間、僕は面倒ごとの内容を想像しつつペダルを漕いだ。

 帰宅すると玄関に見なれない靴があった。リビングに入るとソファーに座った僕の”身近な人”が2人の男に話から聞かれている。ただならぬ雰囲気である。その鼎談を横目に台所へ向かう、冷蔵庫と食器棚の狭いスペースに置かれたパイプ椅子が母の定位置だ。「どうしたの?」と聞けば、「還付金詐欺にあった……」と弱い声でつぶやく母。僕の頭は一瞬真っ白になった。

「還付金詐欺って『還付金がある』と言ってATMコーナーに誘導して、現金を振り込ませる。アレ?」

 母は頷き、400万だよ!と被害総額を吐く。“身近な人”は3つの銀行口座から計8回、詐欺師の言うままに金を振り込んだという。

※ここまで書けば、還付金詐欺に遭った“身近な人”が僕にとって誰に当たるのかの想像がつくはずだ。実家で母と一緒に暮らす身近な人なんて1人しかいない。しかし、当人から僕との間柄を書かないことを約束に原稿協力をしてもらった。そのため“身近な人”といった表記にさせてもらった。ただ、これが続くのも面倒なので被害者については以後Aと記載する。

 被害額を聞いた僕は絶句した。今年72歳となるAがそこまでボケているとは……。

 還付金詐欺はテレビや新聞で頻繁に扱われているトピック。電話で指示を出しATMを操作させて、振り込ませる手口を見て「こんなの騙されるヤツがいるのかよ」と僕はツッコんでいた。まさか自分の肉親がまんまと引っかかるなんて夢にも思わなかった。

 事情聴取中、警察官はAに「なんで9回も振り込んだの、途中でおかしいと思わなかった?」と問い質す。完璧に呆れられている口調である。こんな肉親を見るほど辛いことはない。それに対して、Aはすっかり信じ込んでしまってねぇ(笑)、とただただ繰り返した。

 今回、実家を襲った還付金詐欺。誰が悪いか? もちろん詐欺師グループが悪いに決まっている。しかし、警察官同様に僕もAに対しても怒りの気持ちが湧いてくるのはなぜだろう。

 事情聴取の最後、警察官からAが詐欺師グループに振り込んだ正確な金額が発表された。これほど嫌な「結果発表~!」もない。その額458万円、シンプルに大金である。

 しかし、この後に及んでもAは「すぐに口座を止めたから大丈夫ですよね?」と聞いている。警察官は「ヤツらは振り込まれた瞬間に金を下ろします」と答えた。犯人が捕まったとしても金が返ってくることはまずないでしょう、と続く。そんな残酷な現実を言い残し、2人の警察官は去っていった。

 3人だけになった実家が嫌な空気で満ちる。この事件はこの家に長く影を落とす、と僕は悟った。8月13日、瞬間的な辛さではなく永続的な鈍痛が実家にこびりついた。

 翌朝、実家に行くとAはせわしなく各銀行に連絡をしていた。2時間後、作業を終えたAは「取られちゃったものは仕方ない、オレは腹を括った」と僕に話した。そして、入金先から奇跡的に下されていなかった38万円を取り戻せたことに歓喜。一方、僕は死にたいくらいの気分だった。

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