舛添要一氏
もっとも「NHKをぶっ壊す」という主張は、決して新しいものではありません。評論家・古谷経衡氏も指摘していますが(https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20190722-00135151/)、「○×新聞は左傾化している」「○△テレビ局には在日が優遇された反日放送局だ」「だから世論が誤った方向に誘導されている」といった大手メディア批判は、かつて一部の保守派でも展開された主張です。「NHKをぶっ壊す」とは、いわば使い古された言葉なのです。だからといって次の政治スローガンを探さず、これを先ほど述べたように、ひたすら連呼するところが、立花氏の強さです。
実はヒトラーも、伝統的保守派からは当初、「色物」のようにバカにされていました。SA(突撃隊)という、熱狂的な信奉者のガードのもと、共産党などの対立陣営のもとにも足を運び実力行使をも厭わないから、せいぜい共産主義に対する防壁と考えていただけです。しかし、既成政党や有力政治家が、庶民とは関係のないレベルでの政治闘争を繰り広げている間に、彼は着々と存在感を増していきます。そして民主的選挙によって、議席を増していくのです。
繰り返しますが、立花氏がヒトラー的独裁者だとは思っていません。ただしマスコミが、彼のようなある種のポピュリストを面白がっている間に、思いも寄らぬことが起こりうるという思いはあります。その点、ジャーナリスト・江川紹子氏による「メディアはN国の取り上げ方をよく考えて」という主張(https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20190816-00138652/)には、全面的に賛成します。
20世紀最大の暴君ヒトラー。この男が当時最も民主的な国家と言われたワイマール共和国から誕生したことを、現代に生きる私たちは忘れてはなりません。
*『ヒトラーの正体』刊行イベント「ヒトラーはいつだって甦る ──永田町のバカへの警告」(舛添要一氏×適菜収氏対談)が9月7日に本屋B&Bにて行われます。(詳細→http://bookandbeer.com/event/20190907a/)