「仕事で知り合ったので、最初は家庭的かどうかわからなかったけど、気が利く子だな、と思ってました。飲み会の席で、空いてるグラスにすぐに気づいたりとか。彼女は僕の友人に会いたがって、フットサルについてきたりするから、ちょっと面倒なところはあるんだけど、人に気を使える人なので、友人にもいい彼女じゃんと言われたりして。美人ではないけどいつもニコニコしてるタイプで、奥さんにはいいかなあと」
実際、家庭的な人でもあった。料理は上手く、お弁当を作ってくれることもあったという。そんな彼女と、付き合い初めて一年もたたないうちに、入籍した。トントン拍子に新生活に移行したのは、元カノと別れた淋しさが少しは影響していたのだろうか?
「そうですね、別れた直後はあったと思います。でも今はまったくないですね。僕、結婚して小遣い制になり、妻には家が欲しい、子供も二人は欲しいと言われているから、過去を振り返っている余裕がなくなりました。ありがたいことです(笑)」
◆もう一回くらい恋愛したい
付き合っていたときは仲が良かったのに、結婚して一緒に暮らすようになった途端、上手くいかなくなるカップルはいる。健人さんが言うように、結婚は生活なのだろう。そういう意味では、結婚前の同棲で互いの価値観の違いが判明することは、良いことと捉えることもできる。
しかし、長い同棲期間中に失われていくものもまた、あるようだ。友人に、自分と同じようなヤツがいると、健人さんが教えてくれた。10年以上同棲をしているものの、結婚する気はないと明言しているという。だがその理由は、健人さんとはちょっと違っていた。
「彼が同棲している彼女は、2、3年前に職場のトラブルで仕事をやめてしまって、家賃も生活費も友人が出してるんですよ。再就職が決まるまでは可哀そうだからって、同棲を続けてるんですよね。とはいえその女の子は家事は全部やってくれるらしく、言ってみればすでに専業主婦のようなもの。生活に不満はないようなので結婚しちゃえば、とも思うんだけど、もう愛がないって友人は言ってます。友人は、僕と同い年だから40歳前、もう一回くらい恋愛したいなって思ってるんでしょうね」
長すぎた春の結末はもちろん人それぞれで、女性側の言い分もあるだろう。結局のところ大事なのは、同棲した時間がかけがえのないものであったかどうか、しかないのかもしれない。