6月、これら副業事案に投資した8人が、保証金の名目で預けたおよそ7800万円の返還を求めて名古屋地裁に提訴した。
筆者は、事業を実質的に統括していたという”副社長”を名乗る人物になんども電話取材を試みたが、最後まで応じることはなかった。被害者の救済に関わる法律関係者によれば、西山ファームだけでなく、カード決済会社の関与も含めて、法廷で明らかにしていくというから、全体像は思ったよりも壮大で複雑だ。
奇しくも7月末に、国民生活センターから実際の商品が確認できない、または投資商品や副業などの「役務」をめぐる「モノなし」マルチ商法が20歳代や20歳未満の若者の間で広がっていると注意喚起が出されたばかりだ。実態や仕組みが把握できないのに、儲かる副業としてすすめられ、クレジットカードでの決済や借金によって投資をした結果、利益が得られず支払いや借金だけが残される。大学生が自分のクレジットカードで投資をして、気付けば支払いに追われ、青くなって親に泣きついて発覚するというようなことも起きている。
また、モノなしマルチは、様々な“商品”を用いて展開されることも知っておくべきだろう。例えば「(取引所に)上場予定の仮想通貨の購入権」をクレジットカード決済で購入させる、などといった事例も確認されている。そもそも「モノなし」なのだから、上場予定というスケジュールも、仮想通貨のプログラムさえ用意されてなく、徹頭徹尾、全てがでっち上げなのだ。
誰も知らない裏技で利益が出る…こう言われて興味を持ってしまうのは仕方ない。だが、そうした話を囁いてくるような人々が、果たしてまともなのか、考えて欲しい。そんな人たちに、大切な金を預けることに危険を感じないか、今一度立ち止まって考えるべきなのだ。
老後資金は年金以外に2000万円が必要だと政府が試算を出した影響もあり、自己資金を少しでも増やそうと誰もが思う時代だ。とくに、景気がよい時代を知らずに育った現代の若者は、少しでもお金を増やして貯めておきたいという意識が強い。不安につけこむビジネスは、これから先、もっと増えてくるだろう。少しでも不自然さを感じたら、恥ずかしがらずに相談をしてほしい。