ファミリーマートの澤田貴司・社長
そこから流通小売業への関心が一気に高まった。そして忘れもしない1995年12月27日、私は「伊藤忠も本格的に流通業に参画すべき」と、当時の社長の室伏稔さんに手紙で直訴しました。
「日本の流通業は143兆円の市場規模があるのに、近代的経営をしているのはセブン-イレブンだけ。セブン-イレブンとイトーヨーカ堂にできて伊藤忠にできないはずはない。日本の流通構造は過去最大の転換期を迎えており、本格参入の絶好の機会だ」という内容でした。
社長はその手紙の内容を翌年の年頭挨拶で引用して下さり、プロジェクトに予算も人員も付けてくれた。
しかし、それから2年間頑張って動きましたが、当時の商社は原料や中間流通がビジネスのメインで、組織が大きすぎて小回りが利かなかった。自分の能力不足も痛感しました。そこで一念発起して、伊藤忠を飛び出したんです。
1997年から2002年まではユニクロのファーストリテイリングに在籍しました。今の自分があるのはユニクロ時代のおかげ。失敗もたくさんありましたが、本当に良い勉強になりました。
◆「出店競争」時代は終わった
──その後、経営支援会社の起業などを経て、2016年からファミリーマートの社長に就かれます。ファミリーマートは伊藤忠の関連会社(2018年4月より子会社)です。“古巣”に戻られたのはなぜ?
澤田:自分から伊藤忠を飛び出し20年余、様々な仕事をしてきた僕に対して「ファミリーマートを任せられるのはお前しかいない」と声をかけてくださったわけですから。男冥利に尽きる話でした。感謝しかないし、意気に感じました。