「春夏に売上が少ない理由を調査してみたら、『暑いからお湯を使いたくない』という声が多数寄せられたんです。そこから、お湯を沸かさずに夏場に食べられる麺を作るため、開発が始まったんです」(曽根田部長)
当時の開発者が「月に行くよりも難しい」と漏らすほど、難航した末に完成した流水麺。しかし、最初はなかなか市場に受け入れられなかった。
「斬新すぎたのか、当時は否定的な声も多かったです。30年前はコンビニも今ほど普及しておらず、調理麺や中食自体が浸透していなかったので、茹でずに食べられる流水麺は見慣れず、受け入れがたかったのでしょう。スーパーなどの小売店でも、『食べ方がわからないから』と断られたりもしたとか。発売を開始した5月の時点では、売上が厳しかったのですが、本格的な夏場になり、ようやく売れたそうです」(曽根田部長)
以来、ひたすらに改良を繰り返し、おいしさも機能も年々グレードアップ。その進化の度合いは、「歯ごたえや喉に通る感じは、発売当初とは全く別物」とシマダヤに30年勤める社員が断言するほど。流水麺のお蔭で、今やシマダヤの売上は春夏で大きく伸びている。
◆京浜エリアで根強い人気のワケ
流水麺のシェアは、特に京浜エリアで高い。
「30年前は今のように物流センターが一般的でなく、当社もルートセールスからスタートしました。自分たちで1件ずつ売り場を回っていたんですよ。その名残で、今でも関東・京浜エリアが中心になっています」(菊池氏)
実際、京浜エリアでの存在感は大きく、元々冷たいうどんを食べる文化のなかった関東圏で、家庭で食べられる冷やし麺の文化を作り上げたのは流水麺だという声も出ているようだ。