そして、盛んにテレビで取り上げられ始めたのがチョ氏のスキャンダルだ。チョ氏は文大統領が次期法務部長官(法相)に指名した人物。端正な顔立ちや華麗な経歴などから人気が高かったが、娘の大学不正入学疑惑が浮上。息子の兵役逃れに妻の資産隠し、家族の私設ファンドへの投資と、次々に出てくる疑惑に“タマネギ男”と揶揄された。
報道によると、どうやら文政権の支持率が低下した一番の理由はこれらしい。GSOMIAの破棄も、大統領が反日を執拗に煽ったのも、このスキャンダルを隠すためではなかったかとまで報じられた。「また政権のスキャンダルだ、やっぱり韓国って…」。私の反日感情に対する嫌悪感も、韓国へのマイナス感情も強まっていく。プライミング効果の影響は大だ。
世論はプライミング効果に左右されやすい。日本経済新聞の調査では、韓国向けの半導体材料の輸出管理強化を支持する人は67%、日本政府が韓国との関係改善に譲歩するぐらいなら、改善を急ぐ必要はないと回答した人は67%にのぼったという。テレビやメディアはこれから、報道に影響される国民感情をどこへ誘導していくのだろう。
ちなみにチョ氏は、国会で聴聞会が予定されたが中止となったことで、自身で釈明会見を開いた。紺色のスーツに同じ色のネクタイというシンプルですっきりとした服装に、肩からモスグリーンのリュックをかけて颯爽と現れた。顔を上げ、まっすぐと大きく手を振って歩いてくる様子に動揺は見られない。席に着くや、マイクの位置を直し、書類をきっちりと並べ、全てを自分のペースで進めて行こうという意思の強さが表れる。国民に謝罪はしたものの、すべては誤解だと釈明し、法相の指名も辞退しないという。
文政権はどうなるのか。日韓問題は終わりそうにないが、今しばらくはこのスキャンダルの行方がどうなるか、対岸の火事のごとく冷静に見ていよう。