国内

外国人技能実習生 来日後に絶望する人が少なくないのが現実

茨城県八千代町は白菜の大産地として知られる(時事通信フォト)

 事実上の移民が解禁されたいま、来日外国人は今後も増える見込みだ。外国人による犯罪の増加を不安視する人もいるが、統計をみると、検挙人数そのものはこの数年、減少傾向にある。ただし、彼らの中から粗暴犯で検挙される人数は増えている。その原因のひとつと言われる外国人技能実習生は、技能実習とは名ばかりで、何も習得できず、低賃金労働だけを求められる現実に絶望している。ライターの森鷹久氏が、激増する来日ベトナム人を代表とする技能実習生をめぐる矛盾と過酷な現実についてレポートする。

 * * *
「彼はいい人でした。仕送りもきちんとしてた。でも不満はあったと思います。もっといい仕事ができると思ってた。私もそう思う。ファーマーのお手伝いをしに来た訳ではない」

 茨城県八千代町で高齢夫婦が死傷し、ベトナム人実習生が逮捕された事件から間も無く一ヶ月を迎える。未だ、動機についてはっきりとはしないものの、逮捕された男と同じ八千代町内在住のベトナム人研修生・Mさんが、苦しい胸の内を訴える。

「まずは被害者の方に申し訳ないです。同じベトナム人の研修生がやったこと。彼ら(被害者)に罪はない。でも、彼(容疑者)の気持ちもわかります。私たちはベトナムの田舎の出身。ホーチミン、ハノイなどの都会に出て、学校で日本語を勉強しました。その後、日本で研修生として働く。お金もたくさんかかるから、一家で借金をして、日本で技術を学んで帰るつもりだった。日本人はみんな優しかった。でも、これ(農業の手伝い)をするとは思ってなかった」(Mさん)

 Mさんは、ベトナムでは高等学校にあたる教育課程を経て、その後の数ヶ月間「送り出し機関」と呼ばれる現地施設に入所した。日本で研修生として働くために入る機関で、ここで寮に入り日本語や、日本で生活していく為の知識を学んだという。単なる留学と違い、日本で働きながら様々な技術を学び、さらに金も稼ぐ。だからこそ、Mさんに向けられた家族の期待は大きかったに違いない。地方の農村で暮らすMさん一家は、Mさんのために日本円で200万円もの借金を背負ったのだから、ベトナムの経済事情を鑑みれば、それは一大決心だったはずだ。

「学校(送り出し機関)は綺麗で、食事も美味しい。かっこいい制服もあって、日本に行ってエリートになって帰ってくるんだと頑張りました。私は日本に行きたくて一生懸命に勉強しました。本当は車の整備士になりたかったけど、私はなれなかった。農業しかダメと言われた」(Mさん)

 外国人実習生と一口で言っても、様々な業種に振り分けられる。農業や介護、漁業に建設、食品製造など多岐にわたる分野が設定されているが、実習生に一番不人気なのが「農業」だ。同じくベトナム出身だが、国費留学生として日本の国立大学に通うベトナム人女性・Aさんがいう。

「今、ベトナムで問題になっているのが、日本に行って実習生になれると言って若者を集めている、よくない送り出し機関の存在です。若い人たちはお金を払って日本語を勉強すれば、日本の高い技術を学んで帰国し、儲かる仕事ができると思っています。」(Aさん)

 こうして希望を持って、借金まで背負って“学校”へいく。しかし、そこで待っているのはMさんが体験したような厳しい現実だ。

「学校(送り出し機関)も色々あります。しっかりしたところは、技能のあるベトナム人に日本語を教え、ちゃんとした日本(の受け入れ機関)に紹介する。そこから、一流の技能を学ばせてくれる会社に行ける。でも今はそうじゃなくなっています。お金欲しさに、農業や漁業など不人気な研修ばかりさせる学校が多い。そういう学校に入ると、賄賂を渡せば好きな仕事に就けるが、払わなければ頑張っても意味がないのです」(Aさん)

関連記事

トピックス

筒香が独占インタビューに応じ、日本復帰1年目を語った(撮影/藤岡雅樹)
「シーズン中は成績低迷で眠れず、食欲も減った」DeNA筒香嘉智が明かす“26年ぶり日本一”の舞台裏 「嫌われ者になることを恐れない強い組織になった」
NEWSポストセブン
テレビの“朝の顔”だった(左から小倉智昭さん、みのもんた)
みのもんた「朝のライバル」小倉智昭さんへの思いを語る 「共演NGなんて思ったことない」「一度でいいから一緒に飲みたかった」
週刊ポスト
陛下と共に、三笠宮さまと百合子さまの俳句集を読まれた雅子さま。「お孫さんのことをお詠みになったのかしら、かわいらしい句ですね」と話された(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
【61才の誕生日の決意】皇后雅子さま、また1つ歳を重ねられて「これからも国民の皆様の幸せを祈りながら…」 陛下と微笑む姿
女性セブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
NBAレイカーズの試合観戦に訪れた大谷翔平と真美子さん(AFP=時事)
《真美子夫人との誕生日デートが話題》大谷翔平が夫婦まるごと高い好感度を維持できるワケ「腕時計は8万円SEIKO」「誕生日プレゼントは実用性重視」  
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン