インテリアはキャストスタイルの中でも最も凝った装飾が与えられていたが、その出来もなかなかのものだった。質感的にはダッシュボードがハードプラスチックだったりと、軽自動車の域を出ないのだが、素晴らしいのはウッド風の加飾パネルやドア内張り上のパッドの色の選定をはじめとしたセンス。
単にゴテゴテと飾りつけた感じではなく、とてもまとまりが良かった。また、質感的には大したことのない基本部分も、ドアトリムの厚みが普通車ライクに感じさせる造形が与えられているなど、秀逸なものがあった。軽の欧州車などと評されたN ONEに勝とうという意欲がにじみ出るインテリアだった。
これで走りや乗り心地も上質であれば、見掛け倒しでなく中身も含めて抜きに出た「軽セダンと言えるところなのだが、実際にドライブしてみるといささか乱暴なフィールであったのが惜しまれた。
筆者は昨年秋に同じダイハツの「ミラトコット」で4000kmを長駆し、軽ベーシックとしては異例なほどナチュラルな操縦性や高い安定性、疲労の少なさに驚嘆したが、キャストスタイルはそんなトコットの域には達していなかった。
東京から富士山麓の河口湖へ向かう際、中央道ではなく丹沢山塊の近くを抜ける国道413号、通称“道志みち”のワインディングロードを走ったのだが、トコットがコーナーをリズミカルにターンするようなフィールであったのに対し、キャストスタイルは動きがバラバラという感じで、常にクルマの挙動に神経を使うツーリングになった。乗り心地もゴロゴロ感や突き上げが強く、また舗装面が荒れた箇所ではロードノイズも一気に高まる傾向があった。
もっとも、悪いことばかりではない。最低地上高が150mmとそこそこ余裕があったため、富士山麓の別荘地に広がるオフロードでも床を擦ったりフロントバンパー下部が路面と接触したりといった心配をほとんどせずに通過することができた。乗ったのはFWD(前輪駆動)だったが、これなら圧雪路なども比較的走りやすいのではないか。こうした汎用性への気配りが濃厚なのは、ダイハツ車の特徴だ。
ロングランの実燃費はトータルで22.6km/L。数値的には今どきのノンターボの軽セダンとしては平凡だが、前述の道志みちや山梨の西沢渓谷、果樹園やワイナリーの集積地勝沼から東京の奥多摩に抜ける柳沢峠などのワインディング走行が多かったことを考えれば、まずまずとも言える。ただし、車両重量が800kg台半ばと少し重いためか、市街地燃費は15km/L前後にとどまった。