だからといって、牛の温室効果ガス問題を無視していいとか、そういう話をしたいのではない。あまりに強引なミスリードが土台となり、記事の中身も見ない人々が世論を形成していく。反射神経だけで生きようとすると、この世界はどんどん世知辛くなってしまう。

 余談だが、米国農務省(USDA)によれば、アメリカ人の肉の年間消費量は2018年に過去最多となる1人あたり222.2ポンド(約100.788kg)見込みだったという。ちなみに日本は31.6kg(2016年度)。日本人程度の消費量でも、健康リスクが騒がれるのだから、その3倍量の肉を食べているアメリカ人にとって肉食にまつわる健康問題はとても深刻なものなのだ。

 話を戻そう。『リテラ』の最後の見出し、〈海外メディアもツッコミ〉に至っては、かなりのアクロバティックな見出しである。実は記事を読み込んでみると、海外メディアがツッコミを入れたのは、ステーキとは何の関係もない「セクシー」発言や「中身のない発言」についてのみ。ステーキとはまったくの無関係だし、そもそもメディア上でも一言二言しか言及されていない。

 当たり前だ。たかが異国の新人環境大臣が何を言ったところで、欧米メディアが大々的に取り上げるわけがない。

 なのに、一部の識者がこうした煽りメディアの“報道”を〈気候変動対策を議論する会議に出席する環境大臣が「ステーキを食べる」ことが非難を浴びた〉という導入から〈牛肉の大量生産が、気候変動を促進し、食糧危機をもたらし……〉という持論や、〈NYやイギリスなんかではもう牛肉食べないとかって動き〉という極論へと展開した。堂々と論を語ればいいのに、余計な枕をつけるから偽ブランド品で格好をつけているように見えて、なんとも格好悪い。

 欧米礼賛手法を使わせていただくなら、欧米の菜食主義者には多様な価値観がある。自分たちが食べない牛肉食ひとつとっても、「牛肉禁止はあまりに安易で反射的」「より温室効果ガス輩出の少ない放牧牛を選ぶなど妥協点を見つけるべき」など多様な論がある。

 国内の反応は「国際的な笑いもの」「最悪」など散々だったが、新環境相は「これがニュースになるんだったら、それだけでも日本のなかで環境問題を考えるいいきっかけになる」と言った。負け惜しみ感も強いが、少なくとも煽りメディアの論に乗っかったり、遠くで起きている小さな事実を極大解釈して、弱り目をここぞとばかりに叩くよりは、遥かにセクシーである。

「Sexy」で辞書を引くと「魅力的で刺激的、興味をそそる(口語)」(Oxford English Dictionaryより)という意味もある。使い方はいい。後は中身である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
結婚を発表したPerfumeの“あ~ちゃん”こと西脇綾香(時事通信フォト)
「夫婦別姓を日本でも取り入れて」 Perfume・あ〜ちゃん、ポーター創業の“吉田家”入りでファンが思い返した過去発言
NEWSポストセブン
村上宗隆の移籍先はどこになるのか
メジャー移籍表明ヤクルト・村上宗隆、有力候補はメッツ、レッドソックス、マリナーズでも「大穴・ドジャース」の噂が消えない理由
週刊ポスト
(写真右/Getty Images、左・撮影/横田紋子)
高市早苗首相が異例の“買春行為の罰則化の検討”に言及 世界では“買う側”に罰則を科すのが先進国のスタンダード 日本の法律が抱える構造的な矛盾 
女性セブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン