以来、彼を盛り上げるべく、NON STYLE石田を始め、東京や大阪在住の売れっ子芸人がどれだけ梶の元を訪ねただろうか。

 それは梶が「住みます芸人」になって最初に「今まで香川になかったようなお笑いライブをたくさんする」と決意したから。それまでも、芸人がショッピングモールなどにやってきてネタをやって帰るということはあったそうだが、梶は「トークであったり、企画コーナーであったり、お笑いの楽しさをもっと知ってもらいたいという思いで、ライブを定期的にやるようにしました」という。

 次々舞い込む地元のレギュラー番組では、スタッフから「笑いをとるより明るく元気にやってほしい」と言われているとか。それは梶の平和的なルックスと『しくじり先生』で全国に知れ渡った人柄の良さをそのまま出せば成立した。

 果たして梶は「住みます芸人」になって明らかにたくましくなった。「防災士」の資格を取得し、子供さんや年配の方に防災の講演をしているのを始め、2017年からは冠のついたお祭りを開催しているのである。『かじ祭り』だ。

 スポンサーを自ら探しに行き、出店者にプレゼンをしたり、警察・消防・保健所などへもすべて自分で申請に行ったという梶。香川在住の若者たちから「香川はすることなくて面白くないから、休日は県外に遊びに行く」と聞いてから、「香川で面白いことをやろう」と決めたそう。

 ステージでは東京や大阪からやってきた人気芸人のお笑いライブがずっと行われていて、周囲には香川の飲食や工芸品、ワークショップなどのいわゆる“マルシェ”を行っている。

 新たな冠イベントとして、10月6日~12日、「丸亀港チケット売り場の2階」というローカル色溢れるスペースで『KAJI讃岐芸術祭』も開催される。これは香川で芸術に関わる子供たちの作品を集め、「少しでもたくさんの方の目に触れる機会を作りたいと思い、これも自腹で場所を借りて始めます。香川県のこれからの子供たちの可能性を少しでも広げたいなって思って色々やっていけたらいいなって思っています」(梶)。

 私が知る限り、「住みます芸人」の中で、もっとも実績をあげているうえ、いまや「地元の名士」であり「文化人」「プロデューサー」といったほうがいいような梶なのである。

 だが、梶にも悩みはあるのだという。「自分が今までやってきたような、お笑いを前面に押し出すような仕事が激減し、自分が『お笑い芸人』だと自信をもって言えなくなっていました」

 そんな梶の芸人魂を再び燃え上がらせたのもNON STYLE石田だったという。

「石田が自分のライブに『出てくれ』と声をかけてくれたんです。そのライブが本当に楽しくて、やっぱり芸人仲間と、芸人らしいお笑いをやっていきたいっていう気持ちに変わりました」という。

 元相方のムーディ勝山を香川に呼ぶようになったのも、そんな理由からだろう。

◇闇営業問題のムーディに「一緒の舞台に立ちたい」

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