以上、いろいろな定理や法則の名前の話を取り上げてきたが、最後に、「スティグラーの法則」そのものについて触れておこう。
じつは、スティグラー自身は、スティグラーの法則の発見者は、ロバート・マートンであったと主張している。つまり、スティグラーの法則自体が、スティグラーの法則を満たす1つの例になっているというわけだ。まるで、落語のオチのようだ。
実際に、なにか新たな事実を発見したり、新理論・新概念を提唱したりする際、その作業を一から十まで1人で完結するということは、まずないであろう。多くの研究者の協力や功績が積み上がっていき、最後に1人の研究者これを完成させる。ただ、定理や法則の名称には最後の1人の名前だけが残り、他の人たちの名前は歴史上から忘れ去られてしまいがちだ。
科学業績を評価する際には、こうした途中段階でのさまざまな研究者の功績をしっかりと見極めて、書き留めていくことが必要と考えられるが、いかがだろうか。