ヤクザ、暴力団は犯罪という闇に足を置きつつ、半分だけ社会に認められている存在だった。世間に認められてナンボの「半社会的」存在なのだ。対して半グレは凶悪犯罪をあまり手掛けず、詐欺などの経済犯罪を専門にしながらも、とにかく世間に隠れて犯罪をシノギとする「アングラ」の存在である。半グレはシノギ以外の分野では法的に堅気であり、よって暴対法も暴排条例も適用されない。
ヤクザが零落して半グレに吸収されれば、それもヤクザの「アングラ化」になろう。アングラ化の本質は「犯罪グループ化」とも換言できる。犯罪グループはどの国にも存在し、各国ともそれなりに取締りに取り組んでいる。
江戸期以来、日本に存在したヤクザは男伊達を売る「半社会的」存在だった。「何某組」と堂々看板を掲げる犯罪組織は他の国にはなかった。その意味でヤクザは特殊日本型の犯罪組織として独自の存在だった。それが今、消滅に近づいている。その後にアングラ化した半死半生の犯罪グループが残る可能性がある。こうした状態は日本の裏社会が特殊日本型の犯罪組織を失い、遅ればせながら諸外国並みになったともいえよう。ヤクザのアングラ化は必ずしも恐るべきことではない。
※溝口敦/鈴木智彦・著『教養としてのヤクザ』(小学館)より一部抜粋