バナナほど日本人の食卓になじみの深い果物はないだろう。バナナの輸入業者でつくる日本バナナ輸入組合の調査によると、りんごやみかんを上回り、バナナは15年連続で国内で最もよく食べられている果物だという。
2人以上世帯の年間消費量は、平均18.4kg(2018年)。毎日食べる人が2割以上にのぼる。明治時代に台湾から入り、昭和の初めまでは高級品だったというが、今では手頃な価格の果物の代名詞。食物繊維や糖質など栄養も豊富で、朝食の定番でもある。
そんなバナナが国内でどれくらい生産されているか考えてみたことはあるだろうか。実に国内の市場に出回るバナナの99.9%以上がフィリピンやエクアドルなど海外から輸入されたもので、国産は0.1%にも満たない。
「食料自給率」という言葉がある。国内で消費される食料がどのくらい国産でまかなえているのかを示す数字だ。カロリーベースでいうと、1960年度の79%から昨年度は37%まで落ち込んでいる。カナダやオーストラリアでは200%以上、米国が130%、フランスでも127%あるなかで、日本の自給率は先進国で突出して低い。
輸入食品の残留農薬の問題などもあり、安全安心な国産農畜産物への消費者の関心は高いはずだ。ましてや、日本人が日常的に食べる果物・バナナならなおさらだ。
それでもバナナの自給率がまったく上がらないのは、熱帯の東南アジアを原産地とするため高温多湿の気候が望ましく、冬の寒さが厳しい日本では栽培に適さないとされてきたからだ。国内にあるわずかな産地も、これまで沖縄や鹿児島に限られてきた。
とはいえ、このまま輸入物に完全に依存していていいのだろうか。