リチウムイオン電池の開発で2019年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏(旭化成名誉フェロー)。受賞決定後の会見で、吉野氏が「科学への興味を持つきっかけになった本」として挙げたのが『ロウソクの科学』(ファラデー著)だった。
会見直後から「子や孫に読ませたい」と出版社や書店に問い合わせが殺到し、版元各社は緊急重版を決定した。
ノーベル賞受賞者に限らず、各界の成功者たちも子供の頃に読んだ本が、その後の人生に大きな影響を与えたという。たとえば宇宙飛行士もそうだ。
1992年に日本人初のスペースシャトル飛行士となった毛利衛氏が幼い頃に読んだ思い出の本は、アメリカ(ロシア生まれ)の物理学者ジョージ・ガモフの『不思議宇宙のトムキンス』である。サイエンス作家の竹内薫氏が解説する。
「物理学好きがこぞって読む本。相対性理論は大人でも難解ですが、わかりやすく解説されていて、子供の好奇心をくすぐる種がたくさん詰まっています」
毛利氏はかつて新聞への寄稿で、10歳の時に兄の本棚から借りて読み、同書が〈未知の大人の世界をゾクゾク感じさせてくれた〉と記した(産経新聞2002年10月22日付)。