国内

大阪女児誘拐事件 被害者をネットで非難する卑屈な人々

大阪府警本部に入る伊藤仁士容疑者(時事通信フォト)

大阪府警本部に入る伊藤仁士容疑者(時事通信フォト)

 明らかに弱者が被害者となった事件が起きたとき、なぜか被害者のあら探しに熱心な人たちがいる。その声は、SNSの普及によって実際より大きく広まってしまうことがある。大阪の小学6年生女児が行方不明になり、栃木県で発見された事件をきっかけに、あぶり出された大人の不見識がSNSで声高に叫ばれる歪みについて、ライターの森鷹久氏が考えた。

 * * *
「本当にありがとうございます。感謝しています。」

 11月17日から行方不明になっていた大阪府内の女児が、栃木県内で6日ぶりに無事保護された。不明時から、メディアに気丈にも応じていた母親だったが、現在は取材をうけていない。今頃は、深い安堵の中で愛娘と幸せを噛み締めているのだろう。

 不明から女児の発見、そして被疑者の逮捕、というめまぐるしい展開のなか、今回の事件は過去に発生した誘拐事件と比べると、取材現場のテンションが低めだ。それは次のような理由だ。大手紙関西担当記者の話。

「いわゆる”誘拐事件”、近年でいえば2016年に埼玉・朝霞で誘拐された少女が2年ぶりに保護されたときと比べると、連れ出された時の様子が違う。女児は、ネットゲームとSNSを通じて知り合った被疑者と事前に連絡を取りあい、男の家に行っていたのです。朝霞の事件と比べると、無理矢理連れ去った印象が薄い。もちろん、小学生の女児ですから、仮に彼女が一緒に移動することを受け入れていたとしても、それは成人同士の”同意”とは異なります。しかし、共感を得られにくくなったのは事実」

 ネット上では、もっと極端な、配慮がない声が目立っている。小学6年でスマホを持たせる家庭環境が悪い、自発的に行ったのだろう、(被疑者の)男はかわいそうだ、といった意見である。被害者を非難する声が出やすくなってしまっているのだ。前述の記者は、女児の保護、犯人逮捕で落ち着いた本事案について、検証報道をやり過ぎてしまうと「女児が悪い」といった空気の醸成が進むことを懸念している。

「女児が保護された直後、容疑者の家に茨城県出身の女子中学生がいたことも判明しています。家族が捜索願を出していましたが、家出が発端であり本人が”見つからないように隠れていて監禁ではなかった”とも話しているから、男はむしろ被害者ではないのか、という間違った意見が飛び交う恐れもあります」

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン