地元産の飼料用米が配合されたペレット型飼料

 一方の濃厚飼料は、トウモロコシや大豆の油粕、糠などからなり、タンパク質や炭水化物などが豊富で、牛の筋肉のもととなる。黒毛和牛の飼育では、サシが多く入った肉にするために、この濃厚飼料を多く与えることで脂肪分を増やすという。

 問題は、これら「飼料の自給率」が日本では非常に低いということである。

 たとえば、濃厚飼料の原料は、およそ半分がトウモロコシだが、そのほとんどを輸入に頼っている。日本は世界最大規模のトウモロコシの輸入国で、そのうち食用に回されるのはわずか4分の1。残りはすべて飼料用に回される。

 農水省統計によると、昨年度の濃厚飼料の自給率はわずかに12%だ。つまり、国産牛肉の消費が進んでも、「飼料の自給率」を高めないことには、自給率全体は大きく改善しないということになる。

 別の言い方をすれば、国産牛であっても、その牛が食べているのは、ほとんどが“輸入食品”なのである。何かのきっかけで輸入が止まれば、牛を育てることはできない。

 JA菊池の肉用牛生産者のあいだで、飼料に米を混ぜるという取り組みが始まったのは、2008年のことだった。アメリカでトウモロコシをバイオ燃料として利用する動きが進んだ影響で、この年の飼料価格が大幅に上がったことに危機感を募らせたためだ。

JA菊池畜産家の中原さんと重岡さん

「原料を輸入に頼ってばかりでは経営を圧迫することになるのではないか、地域で飼料を自給できる方法を考えるべきではないか、という声が生産者から上がったんです」

 JA菊池畜産課の重岡拓実さんと中原慎二郎さんは経緯をそう説明する。地元には高齢化によって農家が稲作をやめてしまった「耕作放棄地」も増えてきていた。そこに飼料用米を栽培し、試験的に牛の飼料に混ぜることにした。

◆ビタミン、ミネラル豊富。うま味成分も増した!

 当初は、濃厚飼料の上に直接、玄米をバラバラとふりかけて与えていた。ところが、牛がうまく消化しきれないのか、フンに玄米がそのまま混ざって出てくることが多かったという。

「牛はお米から栄養が取れていないんじゃないか。食べさせる意味があるのか」

 冒頭の生産者の中野さんもこの取り組みに加わって、思わずそう感じたという。

「人間が食べて美味しいからといって、牛にとっても美味しいかどうかはわかりませんからね」(中野さん)

 それでも、「新しいものにチャレンジしてみよう」という気持ちが強かったという生産者らは試行錯誤を続けた。米を粉砕する機械を各生産者のもとに設置して、細かく砕いて粉状にした米を飼料にふりかけるようにしたが、これでは生産者の手間が大きい。

 たどり着いたのが、飼料工場の協力で9年前に開発した、米を粉砕したものを混ぜたペレット型の濃厚飼料である。従来使われていたトウモロコシの一部と米を置き換え、ペレットに混ぜることで牛の消化もよくなったという。

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