国際情報

香港デモ、再び激化の懸念 年越しは必至の情勢

選挙から1週間後の12月1日、黒シャツ姿で行進する香港のデモ隊(時事通信フォト)

 5か月以上続く香港の騒乱。当初、平和的に始まった市民によるデモは、いつしか、街の破壊を伴う警察との暴力的な衝突にシフト。いっぽう、11月下旬の区議会(地方議会)議員選挙では民主派が圧勝し、市民は体制側にノーを突きつけた。近著『もっとさいはての中国』が話題のルポライター安田峰俊氏が、デモと政治の嵐に揺れる香港からレポートする。

 * * *
 選挙はすごい。ある社会で意見が大きく分かれる問題について市民がいずれを支持するかの答えが、1人1票の投票結果によって一気に可視化されるからだ。それなりの透明性と公平性が確保された選挙であれば、こうして示された「民意」は第三者に対しても強い説得力を持つ。

 去る11月24日、激しい反政府デモの渦中にある香港で行われた区議会議員選挙もそんな出来事のひとつだった。投票率は過去最高の71.23%にのぼり、デモに肯定的な民主派系の候補者が定数452議席のうち約85%の議席を獲得したのだ。香港の区議会選は小選挙区制なので、実際の得票率は民主派系が53%、体制側勢力の建制派系が42%と比較的拮抗していたが、「デモ支持」の民意が明確に示されたことは間違いない。

 周知の通り、香港では逃亡犯条例改正案への反対運動をきっかけに、今年6月から大規模な抗議運動が本格化した。デモの主張は7月に入ると条例案反対よりも政治の民主化や警察の暴力行為への監督強化を訴えるものが主眼になり、警察側の鎮圧が激化した8月末ごろからは、「勇武派」と呼ばれる一部の過激な勢力が香港地下鉄の駅舎や「親中的」とみなされた商店を破壊するなどの荒っぽい行動が目立つようになっていた。

 長引く政治混乱と都市機能のマヒによる影響は深刻で、香港の7~9月のGDPは前年比2.9%減を記録、10年ぶりの大幅な景気後退局面を迎えている。世論は大きく割れ、親政府(≒親中国)的な報道が多い旧来のメディアに多く触れる年配層と、デモを支持するネットメディアやSNSで情報を得ている若者層の間で、深刻な社会分断が起きていることもしばしば報じられてきた。

 ちなみに、世論がデモを支持していることは以前から指摘されてきた。香港大学や香港中文大学による定期的な世論調査では、11月中旬時点でも回答者の6割5分~7割程度はデモに好意的とされる結果が出ているからだ。だが、学術調査とはいえ民間機関による1000人程度を対象にした調査の結果には多少の疑わしさもあった。ゆえに、ほぼ全市民が投票可能な区議選において民主派が圧勝した今回の選挙結果は、圧倒的に強い説得力を持つことになった。

 

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン