11月24日の香港区議選の様子。親中国的な建制派陣営の候補者はデモ隊に破壊された中国建設銀行の前で選挙活動をおこなうも、あえなく落選。ちなみに香港では投票日でも選挙活動が可能だ(筆者撮影)

 従来、私は香港のデモには動機に一定の理解を示しつつも、公共施設や商店の破壊行為には批判的な立場で記事を書いてきた。笑ってふざけ合いながら駅に火をつけている勇武派の姿は私自身が現地で目にしたし、同様の話は他の人の証言でも聞いている。

 こうした破壊行為に携わるのは多くが10代の若者たちで、カラーギャング的なガラの悪さを感じさせる人も少なくない。少なくとも一部のデモ隊は、暴力が自己目的化してコントロール不能に近い状態に陥っているように見えた。

──ただ、選挙前後に現地に渡航した際の肌感覚や選挙の結果を受けて、私は評価を多少修正した面がある。

◆デモ隊vs警察の対立は続く

 それを強く実感させたのは、11月第3週に勇武派が複数の大学を占拠して警官隊と極度に激しい衝突を繰り返した後に、10日間ほどピタッと「休戦」したことだ。これはちょうど区議会選前後の期間と一致する。選挙後にはデモや集会が再開されたが、しばらくは以前とは比較にならないほど平和的な抗議運動が続き、それまで荒れ狂っていた過激な抗議はなにかの間違いではなかったかと思えたほどだ。

 こうしたデモの沈静化は当初、激しすぎる大学占拠に市民から「やりすぎ」とみなすムードが出はじめたことや、1000人を越える逮捕者が出て勇武派の力が弱まったこと、逮捕者を通じてデモ参加者の情報が警察側に流出したこと、暴力行為の容疑者に多額の賠償金を課した判決が出ていることなども理由ではないかと思われていた。

 だが、警官側が再びデモ隊に催涙弾を撃った12月1日以降は、再び勇武派が暴れはじめ、彼らがターゲットにしている吉野家や元気寿司などの店舗の破壊も再開された(ちなみに香港の吉野家や元気寿司は日本本社と資本関係がない現地フランチャイズで、運営元の美心集団が「親中的」とみなされたことでデモ隊から目の敵にされている)。

 つまり、香港のデモ隊の暴力行使は、その気になれば停止も再開もコントロールが可能だったということだ。10日間ほどの「休戦」も、別に大量の逮捕者が出たことや厳罰をおそれたことが理由ではなく、民意を示すチャンスの前後に騒ぎを起こさず予定通りに区議会選を実施させる戦略的な判断にもとづく行動だったのである。そういえば過去も、中華圏の祭日である中秋節など特定の日には暴力が停止されていた例がある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン