作業の合間に一服する中村医師と杉山氏(杉山大二朗氏提供)
私も経験したように、アフガンはまるで中毒のように離れがたい気持ちになる不思議な国だ。一度、あの地に足を踏み入れると、そこでの人間関係の構築や身を守る危機管理など、自分が持つすべての能力が試される状況が連続して発生する反面、他では得難い出会いや経験が待っている。おそらく中村医師も、アフガンのそうした魅力に取りつかれた一人だったのではないだろうか。
中村医師が目指したのは、アフガンの人びとが水を飲めるようになり、食料の自給自足ができることだった。危険を顧みず、自分の人生の全てをアフガンの人々の為に費やすことなど中村医師以外の誰ができるだろうか。
私は、今こそJICAなど日本政府が中村医師の遺志を継ぐべきだと考える。労働者の育成や、用水路は定期的なメンテナンスが必要になる為、これまで以上に、現地スタッフへの支援体制を充実させ、アフガンの復興に貢献してほしいと願う。中村医師が亡き今、我々は決してあなたたちを見捨てないという想いを伝えるために。
【プロフィール】よこた・とおる/1971年茨城県生まれ。1997年のカンボジア内戦からカメラマンとして活動開始。アフガニスタン、イラク、シリアなど世界の紛争地を取材。著書に『戦場中毒』(文藝春秋刊)がある。