「東京ステーションギャラリーが誕生したのは、実は東日本鉄道財団の設立よりも前なんです。1987年に東京駅丸ノ内中央口の貴賓通路で展覧会を開催したところ、大きな反響がありました。そうした反響を受け、『東京駅のなかに常設の美術館をつくろう』という意見が出て、翌年に常設のギャラリーとして開館しました」と話すのは、東京ステーションギャラリーの館長を務める冨田章さんだ。
ギャラリー開設前後、国鉄は分割民営化で揺れていた。そのため、東京ステーションギャラリー実現までの道のりは平坦ではなかった。鉄道とは関係のないアート作品を展示するミュージアムが、「乗降客から理解されるのか?」と心配する声も少なくなかった。
しかし、駅を単なる通過点にするのではなく、人が集まる場にするとのコンセプトから、東京ステーションギャラリーは鉄道とは関係の薄いアート作品の展覧会も開催。しだいに、多くの人に訴求するミュージアムへと変貌した。
2014年に東京駅の赤レンガ駅舎が開業当時の姿へ復原されると、東京ステーションギャラリーは中央口から北口へと移転。引き続き、東京駅内にあるギャラリーとして異彩を放つ。
「東京ステーションギャラリーは、重要文化財である赤レンガ駅舎を活用しています。そのため、作品を展示するために壁に穴を開けることができません。そうした制約はありますが、工夫しながら作品を展示しています」(同)
東京ステーションギャラリーに連動するかのように、JR東日本は2016年から車内で芸術鑑賞ができる現美新幹線の運行を開始した。同新幹線の外観デザインは、映画監督の蜷川実花さんがプロデュースし、多数のアーティストが車内で作品を展示している。
駅をミュージアムに活用する動きは、ほかの鉄道会社にも広がっている。