見る人の予想を裏切る強引な筋書きは、アニメ、特撮、ゲームなどの世界で“超展開”と言われ、賛否両論を巻き起こしながらも、それなりに受け入れられてきました。その多くは「ガラッとムードを変えるためにあえて強引な展開を仕掛ける」という狙いによるものですが、心の機微や伏線の回収を重視する連ドラでは、あまり見られません。
まれに連ドラでも超展開のようなものがあり、その都度「ぶち壊し」「時間を返せ」などと批判を受けていましたが、今回は「同じ週に、同じ無関係の人による交通事故」が続いたことで、連ドラ全体のイメージダウンにもつながってしまいました。
強引な筋書きにした主な理由は、「主要キャラクターを命の危機にさらして、序盤から視聴者を引き付けたい」「最も描きたいのは命の危機ではないから、瀕死の理由はこの程度に留めて、早く先に進めたい」「原作通りにしたから」などが考えられます。
とりわけ連ドラは「第1話を見てもらわないと高視聴率は難しい」と言われているため、「何とか見てもらおう」とインパクトの強い筋書きを採り入れる作り手が以前よりも増えました。たとえば、オリジナル作品の『同期のサクラ』は第1話の冒頭に、「重い脳挫傷で昏睡状態の桜を同期たちが心配そうに見守る」というシーンを入れ、その後も何度となく同様のシーンを差し込んでいます。
連ドラらしく時系列で物語を進めていくのなら、8話で交通事故に遭うまで昏睡状態の姿は見せなくてもいいはずですが、その形では「第1話から見てもらえない」という可能性があるのも事実。インパクトを強くするために、多少強引でもあえて時系列を入れ替え、終盤の姿を第1話冒頭から見せていたのです。
作り手にとって昏睡状態になった理由は、さほど重要ではなく、第1話から見てもらうための工夫にすぎず、「昏睡状態を脱したあとの姿をじっくり見せたい」という狙いなのでしょう。
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