しかし、大型複合商業施設には別の問題もある。今般、どこの商業施設も売上効率を重視する傾向が強まり、店舗構成はおのずと全国チェーン店ばかりになる。そのため、どこの商業施設も似たり寄ったりで差別化が図りにくい。金太郎飴のような商業施設に、買い物をする消費者や来街者は魅力を感じないだろう。
だからと言って、商業施設が金太郎飴化することを責めるわけにはいかない。運輸収入の増加が見込めない情勢において、不動産で効率よく稼がなくては、そもそも本体の鉄道事業が覚束なくなる。企業である以上、「稼ぐ」ことは至上命題。背に腹はかえられない。JR東日本は東京駅や新宿駅、渋谷駅といった東京の超一等地に不動産を保有し、高架下開発でも国内の鉄道事業者をリードする立場にある。
だから、JR東日本は効率よく稼ぐことができる。そうした立場にありながらも、JR東日本系列のJR東日本都市開発は目先の利益だけを追求しない。2k540をはじめとするアキオカという、街と一体化するような商業施設のコンセプトを大事にする。そして、それに合わせた店舗構成を目指し、高架下を開発に取り組む。再びJR東日本都市開発事業本部開発調査部の担当者が話す。
「秋葉原駅-御徒町駅間の高架下には、2013年に『CHABARA AKI-OKA MARCHE(チャバラ アキオカ マルシェ)』(CHABRA)をオープンさせています。かつて秋葉原には神田青果市場があり、東京の台所として食文化を支えてきた歴史があります。そうした土地の特性を踏まえ、『CHABARA』は全国から選りすぐりの逸品を集めることを目指しました。今回、新たにオープンさせる『SEEKBASE』は、電気街だった頃の秋葉原をコンセプトにしています。そのため、カメラやオーディオ、中古レコードを扱う店を集めました」
JR東日本都市開発が挑む高架下開発は、これまでの複合商業施設とは一線を画していると言っていいだろう。JR東日本都市開発が手がけてきた2k540やCHABARA、そして新たにオープンするSEEKBASEといった個性的な商業施設が、効率を追求してきた商業施設開発のあり方を大きく変えるかもしれない。