だが、これは要するに「忘年会離れ」と「年賀状離れ」ということでしかない。文化・風習は、必要性を感じられなくなったところで実行者が減り、結果的に廃れていく。忘年会も年賀状もその流れにいる、というだけだろう。この20年ほどで使う機会が減ったり売り上げが減ったものを挙げれば以下がある。
公衆電話/雑誌/テレビ視聴率/新聞/ビール/CD/ナタデココ/タバコ/パチンコ/クリスマスはカップルで過ごすものという概念/結納/海水浴/百貨店/スキー・スノーボード
いずれも「スルー」をつけても意味が成立するものばかりである。忘年会スルーと年賀状スルーは、あくまでも若者がSNS上でハッシュタグをつけるなどして「忘年会無視してやったぞwwww #忘年会スルー」などと遊びでやっていたのにメディアが「新単語GET!」と飛びついた間抜けな構図がある。
これからどうせメディアは新たな「スルー」が出たらそれの是非を巡り世代間対立を煽るのだろう。予想しておくが、以下のようなスルーも今後登場するかもしれない。「取り上げたら負け」だぞ。
新年会スルー/バレンタインスルー/ホワイトデースルー/卒業式スルー/入学式スルー/花見スルー/新人歓迎会スルー
これに対して「私らが新人の頃は会社の命令に何でも従ったものですが……」と嘆く街のオッサンがテレビに登場し、スタジオの「若手理解系オッサン」が「これも時代の流れですからね」とコメントする様が想像できる。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。
※週刊ポスト2020年1月17・24日号